Hotori Title 2

Vol. 49

98.07.31 (Fri.)



 朝、琵琶湖博物館のある烏丸半島の周回道路を走らせていると、水生植物園『みずの森』のあたりの道路は路上駐車の車でいっぱいであった。両側に駐車しているものだから、反対側から来た車との行き違いができず、全くもって大迷惑。なんでこんなに路駐している車が多いのだろう?と、みずの森の方を見てみるとキレイな赤い花が咲いている。「なるほど、あれを見に来てるんだな」と納得はしたものの、止めるなら駐車場に止めろよ、という感じ。公式な駐車場は博物館の開館時間である9時半まで開かないが、そこらへんに駐車スペースの空き地はあるだろうが....もっともそこに止めていいわけではないだろうが、路上駐車されるよりマシである。

 そんな話を琵琶湖博物館嘱託のH君にしたところ、あの赤い花はハスで、朝のうちしかキレイに見られないらしいよ、と聞いた。なるほどね。私も夕方に寄ってみようかと思ったが、そういうことでは仕方ない。今度来るときは少し早目に来て、ちゃんと見てみようと思う。

 その水生植物園のハスであるが、今がホントに旬の季節らしい。水生植物園のウリも日本有数のハスの群棲地ということであり、その広さは甲子園の2.4倍....とカタログでは言っている(^_^;)。早めに行って午前中は水生植物園『みずの森』、午後からは琵琶湖博物館というコースというのも良いでしょう。烏丸半島だけで1日過ごせるはず。デートなら、夕暮れは湖畔のベンチで、というのもOKかな(笑)。ただし、水生植物園と琵琶湖博物館を1日でまわると、かなり疲れることは間違いない。

トンボ企画展1
企画展「近江はトンボの宝庫」に入ったところ
 水生植物園の話はさておき、琵琶湖博物館は夏休みに入って、子供たちの姿ばかりになっている。子供たちの部屋であるディスカバリー・ルームはもちろん、情報利用室なんかも子供たちや家族連れで賑わっている。日頃、情報利用室はあまりに閑散としているので、なんとなく嬉しかったりする。やっぱりコンピューターっぽいものに興味を示すのは大人より子供たちで、学校団体を入室禁止にしていると日頃はガラガラである。落ち着いてビデオ資料や展示室のディレクターソフトウェアを見てもらうのが目的の情報利用室ではあるが、ちょっと博物館側の意図と現実にはずれがあるという感じだ。正直、このままでは少しもったいない気がしなくもない。

 さて、18日より琵琶湖博物館では企画展『近江はトンボの宝庫』を開催している(追加料金200円が必要)。また、水族展示では『南の島のさかなたち』という企画展も行なっている(こちらは追加料金不要)。少々レポートが遅れたが、今回はまず企画展『近江はトンボの宝庫』をレポートしてみたい。

 久しぶりの企画展『近江はトンボの宝庫』は、その名前の通り、トンボの大特集といった感じの企画展である。今までの企画展はどちらかというと抽象的というか、テーマが来館者に分かりづらい部分もあったように思うが、今回は名前そのものだ。前回レポートした『第1回琵琶湖博物館研究発表会』で発表のあった滋賀県におけるトンボの調査をベースにしたものになっている。


トンボ模型
トンボの大きな模型(企画展示室中央)
 企画展に入るためには、通常の500円にプラスして200円が必要となっている。来館して最初にチケットを買う際に、企画展を見られるチケット(700円)を買えば、そのまま入ることができる。普通の観覧券を買っていても、企画展入口で200円払えば見ることができるので、一通りまわって「やっぱり企画展も寄っていくか」という時にはそうすれば良い。

 さて実際の内容を見ていこう。まず企画展の入口を入ると両側にトンボのキレイな写真を飾ったトンネル通路を通ることになる。写真はこの企画展のベースとなった調査を行なった「滋賀県トンボ研究会」のメンバーが撮影したものだ(→Vol.48参照)。デジカメでくだらない写真を取ってる素人な私にとっては、いや〜キレイだねぇとしか言えない(^_^;)。人が近寄ればすぐに飛んでいってしまうだろうトンボを取るのは、さぞかし難しいだろうと推測できる。

 んが、写真より目立つのがトンネル風通路の造りである。夏をイメージしてか、すだれというかそういう感じのトンネル?になっているのだが、鉄パイプがむきだしで、これはかなり違和感がある。はっきり言えばカッコ悪い。思わず「予算がなかったのかなぁ」なんて下世話な推測をしてしまうくらいだ。これは今回の企画展内の全ての造りに言えることで、これがもし、この企画展をこしらえた業者のセンスとしたら、最低だと言わざるを得ないだろう。ま、この件については後述するとして先を見て行こう。

 写真の飾ってある通路を抜けると、トンボの起源や一生について説明のあるパネル群が始まる。また、日本のトンボ(180種ほどあるそうだ)全ての標本展示もある。パネルの説明は程よく簡潔で、良い感じではある。その先の企画展示室中央には、大きなトンボの模型が置いてある。なかなかの迫力であるが「触らないで下さい」と書いてある(ちと残念)。その先のヤゴの模型に触ってくださいと書いてあって、トンボの模型は駄目だが、ヤゴの模型は触って良いとはどういうことだろう?と思ってしまう。ま、おそらくはトンボの模型は壊れやすいからだろうな....


トンボの構造
トンボの構造のパネル。ビニールシートに書かれている。
 トンボの模型の裏側には、トンボの構造を解説した空間がある。3面+床に、トンボの3面図みたいなのを大きく解説している。しかし青いビニールシートに白い文字で印刷してあり、はっきり言って見にくい。ちょっと見る気にはさせないだろう、と思う。実際、私も見てみようと思ったが、ちと辛かった。もったいない。

 展示室の奥へ入っていくと、研究発表会にも報告されていた滋賀県で見つかったトンボ98種についてリストアップされた大きな展示があり、後の方には分布図などがあり、「滋賀県トンボ研究会」の調査の成果が展示されている。展示室一番奥には、環境別に生息するトンボうあ、日本のトンボおよびアジアのトンボについてのパネル展示が続く。それぞれは写真をふんだんに使ってみやすいが、ちょっと淡々としているかも。


近江のトンボ一覧 トンボグッズ
滋賀県で発見されたトンボの一覧パネル 日本各地のトンボグッズ


 展示の後半になると少しバラエティーに富んでいる。ヤゴの抜け殻がたくさん飾ってあったりする。その時は色々な大きさの抜け殻があるね〜程度にしか思わなかったのだが、なにげに写真を撮ったり、抜け殻をマクロ撮影したりしたものを、帰ってからディスプレイで拡大してみてみると、あまり気持ちの良いもんではなかった(笑)

 その他には標本の作り方なんかが分かりやすく書かれてあったのが印象的。また、トンボグッズの紹介や、トンボに関するホームページの紹介、そしてトンボに関するビデオ映像を流していたりしていた。また、この展示のベースになった「滋賀県トンボ研究会」の紹介もあった。

 ちなみにミュージアムショップ(企画展示室隣のお土産屋さん)で、トンボのグッズがたくさん売っているのを今日発見。全然知らなかった。企画展の有料パンフレット(400円)もあるが、トンボのステッカーやら、ちょっとキラキラした良い感じのバッチなど色々あったので覗いてみるのも良いかも。


トンボに変身してみよう
謎の?「トンボに変身してみよう」コーナー
 で、企画展示室の最後には突如、大きな檻があって「トンボに変身してみよう」なんて書かれてあって、最初何をするところなのかさっぱり分からなかった。あとで企画担当者の学芸員さんに聞いてみようと思ったら、たまたますぐそばにいたので聞いてみたところ、子供たちが着ぐるみを着てトンボになり、檻の中にいる虫を捕らえてもらおうという趣向のものだそうな。つまり「檻はトンボのカゴ」だったわけだ。

 その時は「なんだかなー」と思ってたのだが、後日ちょっと見てみると、小さな子供たちは結構楽しんでやっていた。ま、小学生高学年以上は素通りだが、家族連れなどにとっては良い遊び場なのだろう。そのあたりの感覚は、独身の私にはちょっと分かりづらいものだ(^_^;)

 さて、全体を通してみての印象としては「生真面目すぎるくらいマジメ」という感じである。前述の研究発表会を見ているせいかもしれないが、この企画展のベースになった「滋賀県トンボ研究会」の調査研究発表の色彩が非常に濃い。それはそれで良いとは思うのだけど、残念ながら見せ方が非常に良くないと思う。あくまで個人的な感想であるから言うのだが、見せ方がまずくてもったいない気がするのである。


ヤゴの模型
ヤゴの模型。改めて見ると気色悪い?
 すこし込み入った話にはなるが、前述したように、あちこちに鉄パイプがむきだしの造りで非常に安っぽい。これはこのことを意識しなくても、来館者にとっては何となくのレベルではあっても印象を下げるもののはず。昔、イベントの設営・撤去のバイトを結構やっていたので、個人的にはかなり気になる部分だ。百貨店やイベント会場での数日だけのイベントの際に使われる「お手軽設営」の部類であり、2ヶ月以上にわたっての長期に行なうイベントの造りではないと言える。

 最初企画展に入ったところの通路の写真にしても、あまり写真を生かす造りでない。写真が目立たないようになっている。トンボの構造のところについては前述の通りだし、展示の順路もあまり系統だってないような気がする。日本のトンボの紹介と標本の位置が離れ過ぎていたりもするし....

 せっかくかなり力の入った調査研究に基づく発表なのに、ちょっともったいない。研究発表に重きを置くなら、もっとホントにマニアックにして、前回の『私とあなたの琵琶湖アルバム』のようなシンプルな展示でも良かったように思うし(来館者がその内容が全部理解できなくても凄いな〜と思うような)、逆に『古代湖』の企画展のように、ライティングの妙を含めて雰囲気を持たせるかだ(あまりそれは今回の企画展に似合わないとおもうが)。


標本の作り方
標本の作り方の解説。これは非常に分かりやすかった。
 それと毎回企画展を見ていると、どうも作り方が同じというか安易にも思えてくる。最初にトンネル状の通路を入っていって、展示室の中央にはオブジェ(今回ならトンボの模型)がドーンと置いてある。そういうパターンだ。雰囲気が良ければ、毎回それでも良いのだが、今回のような感じだとちょっと「なんだかなー」な感じがしてしまう。

 なんだか偉そうに言いまくっていて申し訳ない気がするのだが、もうちょっと企画展については見せ方とか来館者の満足度というものに配慮して欲しいと毎回思う。いつも書いているのだが、少なくとも追加料金を払うのだから....前回の『私とあなたの琵琶湖アルバム』を割と評価しているのは、内容はかなり地味であっても、見に来た人がそのテーマについて展示を見ながら色々思ったりできることと、見せ方がテーマに一致していたことにある。今回の企画展は内容がはっきりしていて悪くないのに、見せ方があまりにも残念な気がしてならないのだ。

 それでも今回の企画展について「入る価値あるかな?」と聞かれたら「まぁ、見ても良いんじゃないかな」とは言えると思う。来館者の立場としてね。以前琵琶湖博物館に来たことのある人、特に子供連れにはお勧めかな。そういう意味では夏休みに開催するのはベストなのだろう。夏休みの自由研究のテーマがまだ決まってない子供さんには、特に良いかも知れない(笑)

 まぁ、個人的には、もうちょっとマニアックになってるのかなぁ、と思ったけどね....(^_^;)

 さて、次回は引き続き水族企画展『南の島のさかなたち』をレポートの予定。なんですが、気がつくともうこの下らないエッセイも50回目ですので、ちょっと趣向を変えてインターネットと博物館について思うところを書きたいと思います。前後して水族企画展などもレポートしたいと思います。

 ま、夏の琵琶湖博物館も良い感じ、かな(笑)







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