Hotori Title 2

Vol. 35

97.10.15,22 (Wed)



 10月20日。琵琶湖博物館は1周年を迎えた。そして1周年記念として「私とあなたの琵琶湖アルバム」と題された企画展が始まっている。企画展については良いことを書いた記憶がない(^_^;)。というか正直なところ、企画展示を見る機会があっても、あえて自分から二度三度と入って再び見てみようと思ったことがないくらいだから、それは正直な思いではあった。

企画展入口の暗室トンネル
今回も企画展入口部分は凝ってます。トンネル風になっていて、トンネル出口のカーテンに様々な写真が映し出されます。良い感じ(^o^)/
 最初の「里山」の写真展は、今から思えば開館時の企画展でお金も気合も入ったものだったなぁと思うし、凝ったつくりでキレイだった。が、それだけで写真に興味のない自分にとっては、常設展示と同じ500円の追加料金が必要なわりには、その価値を見出せる人はどれだけいるのだろう?そう思った。事実、あの頃友達とともに博物館に来たことは何度かあったが、いずれも企画展はパスした。みずの森との共通入場券を買ったことは何度かあったけれども。

 その後、「博物館ができるまで」「古代湖」と続く企画展は、過去の琵琶湖のほとりからに書いたとおり。良い印象はない。ただ、「古代湖」は雰囲気は良かったと思ってる。全体として光と影の演出みたいな雰囲気は良かったのだが、今一つ垢抜けない印象と、よく考えてみるとじっくり見るものがなかったな、と今にしても思う。

 前回も書いたように、企画展が別料金で、そして来館者がお金を払う価値があるかどうかについては、今でも基本的に琵琶湖博物館 F.A.Q.に書いてあるとおりである。その中で例えば、何度か博物館に来ているリピーターの人たちに勧められるかも含めて考えて、今回初めて自分でも

ちょっとじっくり見てみたいよね

と思わせるものだったように思う。博物館をレジャー施設として利用している人には、今まで同様関係ないものだと思うけど、博物館を博物館として見に来ている人には、300円の追加料金を払って見に来る価値のあるものじゃないかな?そんな気がした。

 「私とあなたの琵琶湖アルバム」。そんなタイトルを聞いたとき、はっきり言って個人的にはあんまり関心もなかった。なんとなく春の企画展「博物館ができるまで」のイマイチな(^_^;)印象を思い出してしまったからだ。なんでそう思ったのかは自分でもよく分からないけど。


脇田学芸員による企画展フロアートーク
脇田学芸員が企画展内でフロアートーク。企画展内でやった人は初めてと言う話。
 で、先週たまたまオープン直前の企画展示室内部に入ってみたときに、なかなか良さそうかも?と思ったことは前回ちょっと触れた。で、今日博物館に赴いた際に、学芸員さんのフロアートークが企画展内部でやるというので、その話を聞きながら中を見てみて、今回の企画展が「ちょっと良い感じ」だと思った、その理由が分かった気がする。

 企画展入口の部分はなかなか凝っていて、入口から企画展内部までの暗室のようなトンネル部分では、カーテンに映写機がこの30年間くらいの色々な写真を映し出したりしている。「おぉ」と思うが、入口が凝っていたのは今回だけじゃないし、あまり入口だけ凝っていてもなぁ(笑)、と後から苦笑して思い返すこともあったから、それはそれだけのものと思う。

 で、その入口のトンネルを抜けると、内部は落差があるほど殺風景(よく言えばスッキリしているのだが)。今回も入口との落差が有り過ぎるような気がしないでもない。入ってきた来館者は入口部分の凝りように比較して、見るべきものを探せないのではないだろうかと思うくらい。

 実際、多くの部分は壁に掲げられた写真だけ。一見、ホントに地味。この時点で興味を失うかもしれないけど、良く見ると写真は2枚づつペアになっている。このなにげないペアの写真が今回の企画展の最大のポイントだと思う。


企画展示室内
企画展示室内の構成自体はシンプルそのもの。一見、地味すぎる感じもするが、返って良かった感じ。
 博物館のC展示室2Fは「湖の環境と人々の暮らし」というテーマである。一度行った方は知っていると思うが、A/B展示室から眺めの良い渡り廊下を通ってC展示室に入ると、そこには床に大きな地図が貼られているとともに、壁側にこの3〜40年に登場した懐かしいもの(おもちゃにレコードにお菓子に...)が並んでいる。そして中に入っていくと、目玉の1つである富江家の家そのものが有り、その他C展示室には戦後すぐから高度成長期の頃の水環境と、今の水環境の比較を来館者に提示している。

 そのことを、より一層際立たせて、それをメインに据えて来館者に訴えているのが、今回の企画展示なんだろうな、と思う。単に壁に貼られているペアの写真群は、色々見ていくとなかなか興味深い。

 それらの写真は、昭和30年代など昔の写真と現在の写真(撮影日時を見ると8月くらいに撮ったみたいだ)が完全にペアになっている。現在の写真は、昔と全く同じ場所で撮影されたものばかりだ。その場所の変化だけでなく、生活様式の変化も映し出されていて面白い。単に写真だけが有るだけでなく、ちょこちょこと解説が書かれているのも、昔の生活を知らない私にとっては良い感じ。

 興味なければ「ふぅ〜ん」と通り過ぎることもできるが、こういった社会学的なことについて特に興味が有るわけでもない私でも、面白いといえば面白いと感じれるくらいだ。だから、ある一定の年齢以上の方には懐かしくもあり、考えるところもあるだろう。


宝箱?
展示室中央には、色々な道具やおもちゃが箱の中に入っている。勝手に開けて良いらしいのだが、開けている人はいるのかな...??
 よく学芸員さんのフロアートークでも聞く話ではあるが、C展示室でも昔の様々な水環境、特に家庭まわりの水環境の展示をしているのは、現在の利便性に富んだ水環境を今一度考えてみるきっかけとなれば、ということである。それは今回の企画展示にも言えるわけで、今までの企画展よりも主旨が分かりやすい。

 一見地味で、写真が飾ってあるだけの企画展なんだけど、ミニチュアやはりぼてがたくさんあるだけで訴えるものに欠ける企画展よりずっと良い感じ。そして何よりも常設展示室と連動しながらも、常設展示室では掲げきれないものを展示している感じがして、これこそ企画展なのかなぁ、と思う。

 もちろん、もうちょっと解説が写真以外にもあって、写真やコーナー毎のバックボーンの紹介もあっても良かったと思うし、C展示室同様、作った側から訴えかけたいものを文章としてもっと前面に出しても良かったのではないかと思う。たまたま、学芸員さんのフロアートークとともに見たので、各々の写真の掲載した意味を把握できたが、単に来館者が来て見ているだけでは、作った側の主旨が分かってもらえるかどうか....

 このことは博物館全体にも言えるんだけど、わりと「意見」や「訴えかけること」を奥床しく控えめにしすぎている面があるんじゃないかな?と。フロアートークなんか聞いていると、そのことがよく分かる気がする。

# だからこそ、平日のフロアートークはお勧め。  ともあれ、派手さは全然ないけど、なかなか良い企画展なのではないかな?と思う。やっぱり博物館の企画展なんだから、常設展示以上に訴えかけたり、知識を吸収できるところじゃないとね、と思う。古代湖ももうちょっと理系な詳しいことがあったらなぁ、なんて思っていたし。

 と、ここまで書いてからプライベートが忙しくホームページが更新できないまま10日間が経ち、その後もう一度企画展示室内に行く機会があったので、思ったことを追加。


パソコン
奥には写真アルバムやパソコンによる画像データーベースもあって、自由に閲覧できる。
 相変わらず企画展示は人が少なくガラガラ。けど、なぜか小学生が走り回っていたりする。なんでかなぁと思ったら、どうも滋賀県の学校団体は企画展示も無料で入れるらしい。う〜ん、どうなんでしょ?前回、遠足団体の多さに閉口したことを書いたけど、企画展示くらいじっくり見せるためになにか考慮して欲しい気がするなぁ。大人のための、「博物館を博物館として見に来る人」のためのスペースが欲しい気がするし、そういう企画展だと思うんだけど....

 最近博物館に行ったとき、「人が多くて疲れるねぇ」とか「遠足の子供たちが多いからね」そんな会話を休憩所で時折聞く。それを思うと、余計にそう感じるんだな。博物館は飽きられないけど、レジャー施設は飽きられる。開館してまだ1年。これから長い。そのあたりも考えて欲しいなぁ、と思ったり。

 とにかく今回の企画展、博物館を博物館としてくる人には、意外に悪くない。300円の追加料金の分ほど満足できるかどうかは分からないけど、見て、感じる価値はあるような気がする。

 そして今回の企画展の開催中に、友達を何度か連れてくる機会があるだろう私も、今度は企画展も見れるチケットを一緒に買うかどうか迷ってる。そう、今までは博物館お初の友達には「常設展だけでも十分だし、企画展は要らないよ」と言っていたものが、今回は迷うくらいなのだな(^_^)







戻る Vol.34へ Vol.36へ トップページへ




All right reserved 1997 by だぶる☆えっち