Hotori Title 2

Vol. 19

97. 3.12 (Wed)



 「あれはちょっと酷すぎるんじゃないかと思いました」「まるで学生の文化祭の研究発表のようでした」「あれで200円余分に取るのはちょっとねぇ」

新しい企画展「博物館ができるまで」に入ったところ。う〜ん、地味というかなんというか...
 先週土曜日に新しい企画展示を見てきた会社の同僚は、辛辣にも言いたい放題言っていた。やっぱりなぁ、と先週までの急ごしらえのような慌ただしい状況を見ていた私は思っていた。そして今日、とりあえず至急やるべき仕事を片付けた後、いそいそとその問題の(?)企画展示を見に行った....

 まぁ、予想していたよりは格好ついているな、というのが第一印象。“まるで学生の文化祭”というほど酷くはないんじゃないかな?とは思った。が、果たして琵琶湖博物館にふさわしいもので、かつ200円の追加料金を取って見せるに値するものかどうかと言われると、ちょっと....と思う。多少なりとも博物館に携わる者がこんなこと言っちゃあいけないのかもしれないけど、一来館者としての立場なら絶対200円の価値はないと言い切れる自信がある。そして200円取る取らないに関わらず、琵琶湖博物館全体から見ると一番見るべき価値の少ないところであるように思える。


学芸員の机を模したもの。これと同じ意図のものが、もっときちんとした形でA展示室にあります。それを見てきた人には、全く意味のないものでしょう。
 ただ、巷の○○展とかのイベントで、いくらかのお金を取るわりには陳腐で仕方のない企画展もあるのは事実だけど、そういうところと比較してもしかたない。実際、琵琶湖博物館の一般展示全体が500円で見れるわけで、おそらく来館者のほとんどは「500円でこんなに見れるなんて凄いね」と思っているだろう質と量がある。私が友人達を連れてきたときも皆、口をそろえてそう言っていたし、館内にいると来館者のそういう声を今まで幾度となく聞くことができた。そういうハイレベルな、もしくはハイ・コストパフォーマンスな一般展示がすぐそこにあるからこそ、なおさら今回の企画展示の拙さが目に付いてしまう。

 それに今回の企画展示がやはりイマイチなのは、お金だけの問題じゃないとも思う。どうも見る限り「内輪受け」の感じが、かなりする。中に展示されているものには、常設展示で実際に展示されているもののミニチュアであったり、少し形を変えたものが結構ある。けれど実物がすぐ近くに、それも見学コースから言えば実物を見てきたあとにミニチュアを見たって仕方ないと思うのだ。「博物館ができるまで」というテーマ自体、内輪のネタばらし的な意味あいが強いのだけど、もうちょっと何とかできなかったかな、と思う。Q&Aみたいなものがあったりするのだけど、その質問自体が一般の人がするような質問ではなく、元々博物館の工事に携わっていた人しか知らなかったりする内容だったりする。


A展示室にある「ゾウのいる森」のミニチュア。「ゾウのいる森」自体が想像図というかレプリカみたいなものだから、それのミニチュアを展示しても....と思うのですが。ここで見られないもののレプリカならばわかるんですけど。
 一般来館者は誰も知らない話(博物館関係者でも知る人は少ないようなもの)では、何の興味も惹かないと思う。他にもそういう類のものばっかりで、かといって「琵琶湖博物館は凄いでしょう」と自慢するわけでもなし (笑)、「建築土木関係予算に比べると、文教予算は認めてもらうのにこんなに苦労するんです」という悲哀をアピールするわけでもなし(やればいいのに :-)、ただ淡々と貼り紙がしてあるという感じ。訴えかけるところが何もない。

 とまぁ、私自身も言いたい放題言って、こんなこと言ってると怒られるなぁ、と思わなくもない。噂によると(笑)、色々事情はあったみたいだし、ひたすら手作りで関係者の忙しさと苦労は並大抵じゃなかったは見てきているから、あまり酷くは言いたくはないんだけど、もうちょっと何とかならなかったのかなぁ....って思う。

 何よりも問題なのは、全体的にテーマがなく、見るからに場所埋めのような感じで何かがおいてあること。「なんで、こんなところに、こんなものが置いてあるの?」。そう思うものが少なくないのだけど、かといってそれが説明されていない。なんとなく“置けばいいってもんじゃないでしょ〜”と言いたくなる。企画展の後半部分に、他の博物館の紹介があるのだけど、紹介されている博物館の特徴とか書いてあるわけでなく、その博物館の写真に土産物らしきものが置いてあるだけ。おそらくは視察などで行ったときに買って帰ってきたものを引っぱり出して置いたんだろうなぁ(苦笑)。なんか万事がこういう感じ。


お弁当なんかに付いている魚の形をした醤油の入れ物のコレクション。なぜ、ここにこんなものが?まぁ、意図と遊び心は分かるんですけど、一般来館者には説明もないし疑問だらけでしょうね。
 私自身仕事をはなれて「琵琶湖博物館は良いところだよ」と大きな声で言える。でもそう言える一般(常設)展示と比較すると、今回の企画展はあまりにも拙く見える。確かに手作り企画展という感じだから、それはそれで「味」があるのかもしれないけど、それにしては別料金をとるほどのものでもない、という気は以前同様してならない。特に初めて博物館に来る人は、他の所を回るので大変ですから常設展示だけの入場券で十分。個人的には企画展なんぞより平日しかしない(できない)学芸員のフロアートークのような地道な活動の方が百倍好感が持てるし、来館者のためでもあると思えます。


本日のフロアートークは水族担当の秋山さん。水槽内で予想してなかった色々なことが起きているのを正直に話していて、なかなか面白いトークでした。
 ところで水族展示の一角にも「水族企画展」がある。こちらは常設展示の範疇に入るので追加料金は要らない。ま、本当にちょっとした小部屋なので追加料金なんぞ取るようなものじゃないけど、こちらの水族企画展も今回新しくなって“ブラジルの魚”をテーマにしてやっている。はっきり言って、こちらの方が良いです(笑)。ま、こっちは見るのに数分も要らないくらいのものなのですが、熱帯魚っぽい魚が居たりして(ちなみに琵琶湖博物館には淡水魚しかいませんし、このブラジルの魚たちも全部淡水魚です)、来館者の人たちに「どれもみんな地味な色の魚ばかりだねぇ」と、得てして言われることの多い琵琶湖博物館の水族展示では、ちょっと光ってるかも。

 ちなみにピラニア君もいるのですが、「性質は比較的おとなしい」とか書いてあるので、水族担当学芸員のAさんに「あのピラニアは大人しい種類のものなんですか?」と言ったら、「ピラニアは映画にでてくるほど凶暴でもなんでもない」と言われちゃいました。なるほど〜知らなかった。「でも血の匂いに誘われてくるって言いますから、指の先をちょっと切って水槽に手を入れたら、ガブッ!と食いついてきますかねぇ」などと言ったら、呆れたように苦笑いをされるだけでした(爆)。


なんとかテトラ(^^;)。琵琶湖博物館には珍しい綺麗な見栄えのする魚たちです。 ピラニア君。性質は比較的大人しいと書いてあるけど....血の滴る生肉を入れてみたいです(笑)。





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