Hotori Title 2

Vol. 9

96.11.27 (Wed)



結構、感動したかも....

 博物館から会社への帰路、車を走らせながら、仕事を終えての終電の中、そんな思いが駆けめぐっていた。感動、というと少し違うかも知れないが、他に適当な単語が思い浮かばない、今日のインストラクターと博物館スタッフの意見交換会。

 日頃、インストラクターの皆々は本当に、真面目に、忍耐強く、自らの業務をきちんとこなしていると、端から見ても思っていた。そう思ってはいたけど、今日の意見交換会でインストラクターの皆の意見を聞いていると、一人一人が真剣に博物館の運営を、そして自らのインストラクターとしてのあり方を考えていることを痛感し、その純粋で真摯な姿勢に、改めて心を打たれた気持ちだった。単なる監視役や案内係に終わらない、終わりたくない、本当の意味でのインストラクターとしての役目を模索しようとしているその姿勢に。

Photo 1
C展示室の回転実験室。ここはグルグル回る実験室の中で、インストラクターの人が手引きしながら、お客さんに実験をして体験してもらうところ。結構大変じゃないかな。
 冒頭から今一番問題になってる入場券販売のシステム、入場券シールを服に貼ってもらうことに対するインストラクターの不満が爆発する格好になって、その率直な物言いは「そこまでキツイ言い方は...」という思いと同時に「現場に立っている彼女らにそこまで言わさせてしまうほどの混乱なのか」という思い(それなりに分かってはいたけど...)、そしてそれらの意見をきっちり正面から受けて止めている学芸員、博物館事務担当者の姿勢に少しジーンときた。

 お互いが率直に意見を言える場。それは結構難しいと思ってる。「率直に意見を言って下さい」という会議ほど、それが難しかったりするのは、誰しもが経験していることではないかと思う。同じ社内部課内、仲間内ならともかく、立場の違う人間同士が話し合う場では....

 開館から一ヶ月、誰しも慣れや惰性が出る頃だと思う。私自身、それは否定できない。度々行って、毎週のように行っていて、そろそろルーチンワーク化しているところがある。開館後の様々な意見を聞いて、自分の作ったソフトについては大幅に刷新したいものもあるけれど、それに対する情熱というものは、当初の頃に比べれば少し冷めかけていたところもある。

 彼女ら彼らの意見は、あくまで前向きで真剣だった。入場券シールについて様々問題点、提案がされた。けれど、あるインストラクターの方が、こう言った。「現状のシステムは色々と問題があるだろうけど、現在予想を超えて入場者が多いからと言って、当初の理想をたやすく曲げて欲しくない」

 ハッとした。

 悪評高い(?)入場券シール方式は、別に敢えて面倒な方式にしたわけではないはず。琵琶湖博物館は入口でお金を取って、館内に閉じこめるわけではないのである。1階の部分、子供たちの遊び場であるディスカバリールームや情報利用室、そして図書館などは無料空間なのだ。近隣の子供たちが気軽に遊びに来てくれるように、色々と調べたい人や多数の保管ビデオを見たい人には、それが無料で閲覧できるように、そうなっている。そして裏の出入口から湖岸の広場へ自由に出入りできるように、入口で切符を切る「もぎり方式」ではないのだ。


Photo 2
ザリガニ・コーナー。ここも大変でしょうね...ザリガニを乱暴に扱われると注意しなければならないのだろうけど、言い方にも気を使うだろうし...
 開かれた博物館、単なる見せ物に終わらない博物館、と言う主旨の上で、無料空間を作り、出入り自由にし、そのための苦肉のシステムだったはず。それを一部の心ない来館者のために、そして現在の予想外の来館者数に対する混乱のために、その志まで曲げてしまうのは、確かに哀しすぎる(無論、現状の問題点は何とかしなければならないだろうが...)。

 そしてインストラクターという職も、単なる案内役に終わらず、学芸員が常に現場に居合わせられない状況下で、それなりに質問に答えられる説明役というものが求められていたはず。今はあまりの来館者数に、整理役で終わってしまっていても、当初の研修でそう聞かされ、その志に応えようとした人たちは、やはり「今後」というものに不安を思うだろう。

 「ただ立って、一日整理役をしているだけでは、何をしているのかと思う」

 そんなインストラクターの感想が、痛いほどわかる。やりがいを求めてきた人にとって、それは辛すぎるだろう。


 そんな彼女ら彼らの声に博物館の人たちも真摯に受け止め、応えようという気持ちが伝わってきた。インストラクターの人たちの声に動かされた部分もあるかもしれない。博物館の人たちも、いや博物館の人たちだからこそ、真剣に自らの博物館を思うのは当然のことだと思う。

理想とそれを支える純粋さ

 ややもすれば忘れそうになるそんな心。それを強く感じさせてくれた。博物館という現場だからこそ、そんな思いを率直に出すのが許されるのかも知れないけれど、その心を忘れては前に進めない、そんな思いを改めて感じさせてくれた。

 週に1回博物館に来るだけの者としては特に出る必要もなく、たまたま声をかけられたから、何か自分の仕事に関わる部分での発言があったら参考に、というだけで出てみたのだが、そんなことに関係なく、良い場に立ち会えたと思う。直接的なものより、もっと何か自分に対する叱咤を受けた気がする。

 やっぱり....やりがいを感じてる、感じようとしている人、自分の仕事に真剣に取り組もうとしている人は、立場がどうあれ、光ってる。なんてことを言ってる私が、やっぱり一番おちゃらけているかもしれない....けれど、そんな博物館の人たちに接していられるのは、1つの自分の財産に違いない。それは心からそう思ってる。

 できれば、インストラクターのみんなも今の心を忘れないで欲しいな、と思う。そして私も....







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